開催レポート ユーザ同士が学び、情報交換する交流の場 AUJに参加したスピーカと受講者のメリットとは

スピーカになるメリットとは

日ごろの業務をセミナーで語る

「図面内で部屋名を『サーバ室』から『コンピュータ室』に変えるとき、異尺度対応の注釈機能を使えば、修正は1カ所だけで済み、ミスがなくなります」というスピーカの説明に、熱心にメモをとる20人の受講者。そのうち6割は女性でした。

「AutoCAD・AutoCAD LTの標準機能で印刷とレイアウト作成をマスターする」と題するこの中級向けクラスでスピーカを務めたのは、住友電設情報通信システム事業部事業企画部CAD室主査の桑原加奈子さん。会社の仕事ではAutoCADを使っています。

社内のCAD担当者は、少人数で膨大な作業量をこなすことが求められており、桑原さんはAutoCADでの作業効率を高めるため、さまざまな工夫をしています。このクラスで教える内容は、まさに桑原さんが日ごろの業務で実践していることなのです。

「このクラスは、AutoCADに少し慣れてきたユーザが、ここ1~2年のバージョンアップで搭載された新機能を使って業務効率を高めることを目的としたものです。私と同じようなことで困っているAutoCADユーザの役に立ちたいと思い、スピーカに応募しました」と桑原さんは語ります。

「図面を連続印刷できずに困っているAutoCAD LTのユーザをよく見かけます。しかし、最近のバージョンに標準機能として付いている『バッチ印刷』を使うと簡単に解決できます。旧バージョンの感覚で使っているユーザに、その活用方法を伝えたくて」(桑原さん)。

人前で話す機会がなかった自分がスピーカデビュー

7月半ばにスピーカの公募審査の決定通知を受けた桑原さんは、本番に備えて24ページのテキストを作ったり、講演の練習を行ったりと準備しました。その作業は、自分自身の勉強にもなりました。「誰かに教えるということは、何気なく行っていた自分の操作方法を客観的に見直す機会でもあります。操作を工夫しているうちに、新しい機能を発見したこともあります」と桑原さん。

スピーカは、同じユーザである受講者が実務でつまづきやすい点や、困っている点をよく知っています。ユーザ同士が教え合うAUJのクラスやハンズオンは、ソフトの機能説明だけにとどまらず、専門家が実務で困るところまで踏み込んだ具体的な内容であるところが大きな特徴です。ベンダーがソフトの機能だけを行うセミナーとは大きく違うのです。

桑原さんは2006年に行われたAutoCADの機能活用を競う「ダイナミックブロックコンテスト」でベストテクニック賞を受賞しました。その授賞式がスピーカとしてのデビューでした。「それまで会社ではAutoCADのマクロ機能は使っていたものの、パワーユーザというほどではなく、活用方法を人前で話す経験もありませんでした」と桑原さんは振り返ります。そして、前回のAUJ2009では、ダイナミックブロックの活用法についてスピーカを務めました。

スピーカがきっかけで論文を執筆、社内表彰も

桑原さんの場合、AUJ2009でスピーカを務めたのをきっかけに、仕事の幅が急に広がりました。上司からの勧めで『CAD作図作業の効率化と社内標準化』という技術論文を書いたのです。「AutoCADの機能を活用して、作業速度の向上やミスの防止、社内標準を守る仕組みを作りました。その結果、図面1枚当たりの作業時間が1.2時間から0.88時間へと減り、27%の効率化ができました。その結果を論文にまとめたところ、社内で表彰されました」と桑原さんの目が輝きます。

多くの人たちの前でスピーカになるのはちょっと苦手という人も多いものです。桑原さんも同じでした。しかし、ちょっと勇気を出してスピーカの世界に一歩踏み出したことをきっかけに、仕事の内容も変わり、今では社外の見知らぬ人から“AutoCADの専門家”として名前が出ることもあるそうです。

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