Autodesk University Japan 2008 開催レポート

基調講演編

オートデスク株式会社 代表取締役社長 兼
米国オートデスク バイス プレジデント
鬼澤 盛夫

日本でも価値あるカンファレンスに

オートデスクは、2008 年 11 月 11 日、パシフィコ横浜で「EXPERTS, LIKE YOU」をテーマにオートデスクのユーザのための「専門知識」と「専門技術」の学びの場、そして情報を共有・交換し、互いを高めあう場として Autodesk University Japan 2008 を開催しました。

オートデスク株式会社 代表取締役社長 鬼澤 盛夫は、「Autodesk University は、ユーザがユーザの知識を教え合う形で開催したオートデスクにとって初めてのイベントです。ここに集まって頂いた皆様が、お互いに“教え合う”文化を日本でも定着させたい」と会場に呼びかけました。

米国で開催する Autodesk University は今年で 16 年目。昨年度、米国では 1 万人近くを集め、600 セッションが展開されました。鬼澤は、「日本の設計者の数を考えれば、将来は 4000 ~ 5000 人の規模の価値あるイベントに育ってほしい」と抱負を語りました。

米国オートデスク 未来戦略家 
Wayne Hodgins

今回、基調講演を務めたのは、米オートデスクの“未来戦略家(Strategic Futurist)”の肩書きを持つウェイン・ホジンズ(Wayne Hodgins)。ホジンズは、定住先を持たず、世界中を歩き回り、さまざまな分野の人々と交流しています。そういったライフスタイルによって、彼は、違った角度、時間枠を超えた長期的な視点から物事をとらえ、“見えないことが見える”ようになったのです。

たとえば、ナスカの地上絵は地上から見ると、地面に描かれた線や石を並べた跡については認識できますが、全体像は把握できません。しかし、空中(違った角度)から見ることで、地上絵の全体像を見ることができます。つまり違った角度から物事を見ると、違うものが見えてくるということです。ホジンズは、まさに世界中でトピックスを集め、状況や情勢全体を鳥瞰することで、未来を展望しています。

雪片のようにユニークさが大切

ホジンズの講演の主題となったのは「ユニークであることの大切さ」です。現在は、大量生産の時代から顧客ニーズの多様化にこたえないと生き残れない時代への変革期です。

企業も、これまでのように、ひとつの商品を大多数の人にアプローチするのでなく、ユーザのニーズをつかみ、個々に対して適切な商品を提案する流れになってきています。ユーザはそれを受け取るかどうかを決定し、他の商品やサービスと組み合わせ、自身のニーズに合ったユニークな使い方をします。

その一例としてホジンズは、「ブロック」について語りました。「ブロックは、違った形のものが多種類存在します。1 つ 1 つのブロックは大量生産されていますが、1 つ 1 つのブロックを組み合わせることによって、完成品は、無限の形を生み出すことができます」。

さらに、音楽をマッシュアップして楽しむことで意外な嗜好に気づく例や、いくつものコードから成り立つソフトウェアの将来については、ユーザが必要なものを必要なときに選択し、組み合わせて利用するようになってくるだろうと紹介しました。

つまり、あらゆるユーザが特別な個性とニーズを持つとき、あらゆる商品やサービスは部品化され、ユーザの嗜好に合致したものを、ユーザ自身が考えて創出するようになっていく時代がくると語りました。

左脳から右脳へのシフト

このような中、人間の思考は右脳寄りにシフトしていくことが求められます。左脳型=論理性重視から、右脳型=感情と個性重視へ。左脳型で要求される論理的な分析は、コンピュータが代行してくれるようになり、人間の思考は右脳で行うことが中心になります。そして、論理と個性のバランスの取れたユニークさを持った人々が世の中にあふれるようになるのです。

本質を見極めることが重要

最後にホジンズは、「本質を見極めること重要だ」と語りました。その例として、「なぜ長い間人間は空を飛べなかったのか?」という問いを会場に投げかけました。「人間は空を飛びたいと思ってから長い間実現することができませんでした。それは鳥や虫のように羽をばたばたさせることを真似ていたからです」。

しかし 1900 年、人類は想像力を豊かにし、本質を見極め、飛ぶためには“浮く”ということが重要だと気づきました。そして人は飛べるようになったのです。飛ぶための“本質を見極めた”からこそ、その後、さらに速く飛ぶための技術を取得できたのです」。

ホジンズは、この厳しい時代こそ「本質を見極める」ことで、新しいイノベーションを起こすことができる、と提言し講演を締めくくりました。

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