Autodesk Revit

Autodesk Revit 編

11 月 12 日、東京で開催された Autodesk University Japan 2009(AUJ2009)では、合計 12 もの Revit 関連セミナーが行われ、どの会場も Revit ユーザであふれた。実際にパソコンを使って操作方法を学ぶハンズオントレーニングでは、講師を務めた BIM 先駆者のユーザたちが、最先端の活用ノウハウを惜しげもなく披露した。会場の様子をリポートしよう。

株式会社 ビム・アーキテクツ
山際 東 氏

マスモデルでデザインと容積率を極める

BIM を駆使する新進気鋭の建築設計事務所、ビム・アーキテクツ代表取締役の山際東氏が講師を務めたハンズオントレーニング、「マスを極めて、建築をデザインする」は、Revit の特徴的機能である「マスモデル」の基本を1時間でマスターするプログラムだ。
従来の図面ベースの設計では、ボリュームの検討には平面図が必要となり、一度、平面図が完成してしまうと、建物のシルエットなど大きなデザイン変更が難しいという問題があった。この問題を解決してくれるのが BIM 用 3 次元 CAD、Revit Architecture に搭載されている「マスモデル」という機能だ。

容積率を横目でにらみながらデザイン

マスモデルを使った設計は、まず、敷地境界から斜線制限や高さ制限など限界面を 3 次元で入力し、「鳥かご」のような空間を作ることから始まる。この鳥かごの中にマスモデルの「もと」を置き、マウス操作で建物の外形を直感的にデザインしていく。
次に、マスモデルの各階に、「マス床」という単純な床面を設定する。マス床は「事務所」や「店舗」などの用途別に色分けしたり、容積率の対象となる部分だけをピックアップしたりして、マスモデルの大きさや形状に応じた面積表をリアルタイムに自動作成してくれる。
設計者は、自動集計された床面積や容積率などの正確な数値を横目でにらみながらボリューム検討を行うのと同時に、マスモデルのデザインを進めていくことができる。その結果、容積率をフルに生かしつつ、高いデザインを追求していくことができるのだ。

有限会社 アド設計
鈴木 裕二 氏

Revit と AutoCAD の“いいとこ取り”

Revit とともに AutoCAD のベテランユーザーでもあるアド設計代表取締役の鈴木裕二氏は、「Autodesk Revit と AutoCAD の連携」と題した 2 セッションにわたる講演で、両ソフト間でのデータ交換のコツを解説した。
BIM 用 3 次元 CAD「Revit」によって建築設計を行う際、過去に蓄積された AutoCAD の図面資産を生かすことでさらに生産性を高めることができる。そのとき、必要なのが両ソフト間のデータ交換テクニックだ。ここでは、AutoCAD から Revit へデータを渡すコツをテーマごとに解説しよう。
最初のテーマは「AutoCAD の DWG と Revit シートをまとめて 1 プロジェクトで管理する」ことだ。Revit のシートに AutoCAD で作成した図面を貼り付けたもの、Revit だけで作らったシートを含めて、1 つのプロジェクトとして管理することができる。こうすることで、全図面の図面枠の工事名などを一度に変えたり、図面番号の変更を簡単に行ったりすることができる。また、必要な図面を選択して印刷することもできて便利だ。

AutoCAD の図面資産を Revit のファミリに

2 番めのテーマは「AutoCAD 図面と Revit の 3D モデルをリンクする」ことだ。Revit に AutoCAD の DWG 形式の図面を読み込む方法については、「リンク」と「読み込み」という2つの方法がある。リンクの方を使うと、元図面が修正されると、その図面が貼り付けてある図面は全部自動的に更新される。
鉄筋の加工図など、Revit より AutoCAD を使った方が効率的に設計できる場合がある。当社ではH形鋼の継ぎ手などは AutoCAD の「ダイナミックブロック」の形式で様々なタイプや寸法のデータが作ってある。これらの図面資産を AutoCAD から Revit に読み込んで活用することで、設計効率は一段と高まる。
3 番目のテーマは「AutoCAD の 3D 図形を Revit で使う」という活用法だ。AutoCAD 2010 では、曲面を駆使した自由な形状のソリッドモデルが簡単に作れるようになった。使い慣れた AutoCAD を 3D モデラーとして使うことで、茶室の庭にある自然石や、竹小舞窓のモデルなども作りやすい。出来上がったモデルデータは、Revit のファミリとして活用することができるのだ。

IFC 形式で属性情報も交換

4 番目のテーマは、「AutoCAD のハッチングはそのまま使える」ということだ。例えば、Revit のモデルで帯材を並べたベンチのモデルを作ったとき、帯材を 1 本ずつ 3D で表現するとデータが重くなってしまう。そこで、ベンチの表面に AutoCAD のハッチングをインポートして模様を施すことにより、データを軽くすることができる。AutoCAD のハッチングパターンはフリーウエアなどで多数公開されている。
5 番目のテーマは、「AutoCAD Architecture」の3Dモデルを Revit で使うことだ。「IFC」というデータ形式を使って読み込むと、AutoCAD Architecture でモデリングしたH形鋼などの部材形状を属性情報が付いたまま Revit に読み込むことができる。IFC に対応した構造計算ソフトなどの計算結果も同様に読み込める。そのため、IFC 形式を介した Revit と他のソフトの連携に期待している。

大和ハウス工業株式会社
伊藤 久晴 氏

RUG ガイドラインで設計を効率化

Revit が優れているところは、CAD ソフト自体に備わった機能だけではない。1000 人以上で構成される「Revit ユーザ会(RUG)」のメンバーが、Revit を使って建物の企画や建築確認申請、詳細設計などを行う中で編み出した活用ノウハウをまとめた「RUG ガイドライン」を利用できることも大きい。
RUG 会長として、ガイドラインのとりまとめなどにかかわった大和ハウス工業の伊藤久晴氏は、「初めての Autodesk Revit!~RUG ガイドラインを基本にしたワンポイント・アドバイス」と題したハンズオントレーニングで、設計実務を効率化するための様々な Revit 活用の実践的テクニックを紹介した。
まずは図面の作成を効率化することだ。Revit は、様々な「ビュー」を設定することにより、一つの建物の 3 次元モデルから平面図や立面図、パースなど様々な図面類を作成できる。「ファミリ」と呼ばれる建物の 3 次元 CAD 部品には、それぞれに仕様などを表す「属性情報(プロパティ)」を持っている。普段は隠れている情報だが、図面の縮尺や情報の引き出し方によって図面上に自由自在に表示することができるのだ。
この隠れた情報を活用すると、「自動更新される建具表」を作ることができる。この建具表を図面の一角に配置しておくと、設計変更でドアやサッシの数や寸法を変えると、自動的に現在の設計にあった内容を表示させることができる。建具表などを手作業で修正する作業から解放されることで、設計作業に効率は大幅に向上するだろう。

図面作成から始まる BIM の恩恵

Revit を使って設計すると、平面図や立面図、アイソメ図など2次元の図面にも、3 次元モデルの情報が生きている。例えば、建物を2方向から見た立面図を並べて表示するとき、それぞれの図面中にある高さ情報をコンピュータが認識するため、同じ高さになるように自動的に並べてくれるのだ。
ガイドラインを使いこなすことで、建築確認申請に使われる基本図程度の図面は、2 次元 CAD よりも効率的に作成できるようになる。その次のステップでは、BIM のさらなる恩恵が待っているだろう。