Autodesk University Japan 2011
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Autodesk University Japan 2011 レポート

建築の可能性 安藤 忠雄 氏(建築家/東京大学名誉教授)

建築の仕事=心が広がっていく仕事

リーマンショック以降、日本が経済的にも気運としても低迷している中で、東日本大震災が発生し、さらに、その後の福島原発事故の影響が、日本に大きく暗い影を落としている。
いま、ほとんどの日本人が将来に大きな不安を持ち、自信を失いかけている。
この大変厳しい状況の中で、東日本大震災復興構想会議議長代理を務められるとともに、「桃・柿育英会」を有志の方々と再び立ち上げられ、東日本大震災で肉親を失った遺児の学びを支援されている、闘う建築家、安藤忠雄氏が、どのような話をされるのか、非常に大きな興味を持って、講演を聞いた。
安藤氏は、まず自身の作品のスライドを紹介しながら、「建築の仕事とは何か」を語った。
「人が集まって、語り合う場所を作るのが建築」、「建築は心が広がっていく仕事」、「大きさではなく、心に響くか」という言葉は、綺麗な建築作品を作りたい、大きなプロジェクトを担当したい、という考えが先行しがちな建築設計者や建築技術者が、改めて、「建築の存在価値」と「建築の仕事の意味」を考えさせられる言葉だった。

心に情熱を持たない限り、可能性はない

独学で建築を学んだ安藤氏は、事務所を設立した当初はあまり仕事がなかったそうだが、夢を実現しようとする強い情熱を持ち続けるとともに、自分自身の可能性を信じて、自分自身で道を切り開いてきた。
「社会は戦いの場」と捉え、常に前を向いて歩み続けてきたからこそ、道を切り開き、頂点まで駆け登ったのだ。
「可能性は、みんなにある」、「心に情熱を持たない限り、可能性はない」というメッセージは、安藤氏が語ると、ものすごいパワーと説得力を帯びて、“自分にも、きっと可能性がある”という強い気持ちになった。

可能性は、自分で作るもの

福島原発事故による影響は深刻だ。円高の影響と相まって、すでに工場を海外に移転する企業も出てきている。そんな現状の日本は、安藤氏から見ても、かなり厳しい状況だという。しかし、そんな状況だからこそ、安藤氏は、「一人一人が可能性にかけて、元気にならなければならない」という。
いま何をしていいのかわからないという人が増えてしまっているが、そういう時こそ、「隙間を自分で見つけることが大事」なのだ。安藤氏は自身の建築家人生初期の頃の姿を重ね、「自分が見つけたことに挑戦することが大事」で、「挑戦していると面白いことに出会う」と語った。
「これからは、想像を買う時代だ。頭を柔らかくすることが大事」、そして、「可能性は、自分で作るもの」という言葉は、厳しい時代の中で下を向き、想像力とチャレンジする気持ちを忘れ、頭が硬直しがちな、いまの私たちを強く勇気づける言葉だった。

講演のあとの恒例の安藤氏のサイン会は、また今回も、非常に長い列ができた。本にサインを書いていただく間、講演を聞いて興奮冷めやらぬ人たちから、「パワーをいただきました」、「前向きになれました」などの数々の感謝の言葉を聞いた。
安藤氏の講演は、参加者に大きな勇気と希望のパワーを与える講演であった。
今回の講演会のあと、参加者の方々が皆、大変明るい顔をしているのを見て、日本の未来の可能性を信じられる気がした。

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