Autodesk University Japan 2011
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Autodesk University Japan 2011 レポート

ナスラック社におけるバーチャルショールームへの取り組み、コンテンツ作成の内製化によりトータルプランニングを支援 システムメトリックス株式会社 開発部 取締役 前田 吉男 氏

リアルプレゼンテーションの問題点

住宅設備機器メーカー・ナスラックでは、近年、キッチンだけでなく、ナスラックで扱う住宅設備機器のトータルなコーディネイトを提案するトータルプランニングを推進しています。しかし、その運用には多くの課題があり、これを解決するため、同社はオートデスク認定デベロッパであるシステムメトリックスに新たなリアルタイムプレゼンテーションのシステム開発を依頼しました。【E-2】セッションでは、AutoCADとAutodesk Showcaseの活用により、この課題を解決した、システムメトリックスの前田吉男氏にご登壇いただきました。 「ナスラックは、全国10数カ所にショールームを展開しています。その各ショールームでは、AutoCADカスタマイズ機能を使って作成した図面と見積り、そして、同社が独自開発した3次元プレゼンテーションシステムが用意され、これらを駆使して、実際のキッチンそのままの仮想シーンに、リアルな製品を置いて検討できるバーチャルショールームを展開、お客様へトータルプランニングの提案を推進していました。しかし、このシステムは、さまざまな課題を抱えており、同社では、新製品のリリースごとに莫大なコストと時間が発生し、大きな問題となっていたのです」

3次元部材モデルをより広汎に活用するために

最も大きな問題は、部材モデルデータに関わるものでした。システムで扱うための部材モデルデータの仕様が開発会社から公開されていなかったために、ナスラック自身による新しい部材の追加登録ができず、新商品への対応ができませんでした。しかも、CAD上の登録済み部材はワイヤフレーム表現でプレゼンには向かず、3次元プレゼンシステムで作るビジュアライゼーションも品質が不十分で、高品質な画像を得ようとすると、レンダリングに時間がかかり、とてもリアルタイムにプレゼンテーションするレベルではありませんでした。実は、商品企画部門では既にAutoCADでリアルなDWGデータの部材モデル作られていましたが、これがほとんど活用されていなかったのです。
「ポイントは、この3次元部材モデルの活用です。既にあるモノを広く活用できれば、コストも時間も削減できます。そこで考えたのが、AutoCADとAutodesk Showcaseの組み合わせでした。これで部材モデルの活用範囲を拡げ、製品コンテンツデータを自社内で作成、修正しようと考えました。具体的には、DWGのリアルな部材データをShowcaseに読み込んで高質なビジュアルコンテンツを作成。これを新システムNAS-TPに載せ、ショールームでのビジュアルプレゼンに活用。さらに、カタログやWeb、価格表等の印刷物や、商品企画の検討にも使ってもらおうと考えたのです」

AutoCAD & Showcaseによる新プレゼンシステム

Showcaseは読み込んだ3Dモデルをリアルタイム レンダラーで写真のように表現し、多彩なプレゼンテーションを作れる3Dビジュアライゼーションツール。そして、このShowcaseとAutoCADなどを組み合わせて開発された「NAS-TP」は、3次元の部材モデルデータを直接扱うことでトータルなデザイン検討を行い、そこから見積書や2次元図面を自動作成。プレゼンシートも作り出すことを目指した、より多機能かつ高機能な3次元プレゼンシステムとして開発され、現在もその目標に向かって継続した取り組みを行っているシステムとなります。――そう語った前田氏はここでいったん腰を下ろし、ノートPCにこのShowcaseとNAS-TPを立ち上げ、両システムのデモンストレーションをデモで披露。
「Showcaseは、360度どこからでも俯瞰可能な環境に置いた3Dモデルをリアルタイムで検討・提案できるシステム。実際のマテリアルや照明でリアルな質感を表現できるばかりでなく、リモートアクセス機能でShowcase外部に用意された専用のデザイン検討画面からの遠隔操作も簡単です。また、Showcaseの機能を生かしたNAS-TPでは、キッチン等の製品とオプションを選ぶと、選択された組み合わせでフォトリアルな3Dモデルを表示しつつ、価格の提示もおこなわれます。当然3Dモデルは自在にアングルを変えられ、ドアの開閉や光の変化も確認可能。別の製品、オプションを選んで部材構成を変えれば、リアルタイムでビジュアルな製品の外観や価格に反映されるのです」

新システム「NAS-TP」構築への準備段階

多種多様なキッチンプランの検討を軽快に進める前田氏の新システム NAS-TP のデモは、短時間ながら観客に鮮烈な印象を残しました。そうしてひと通りのデモを終えると、同氏はこの新システムづくりの取り組みの具体的な流れについて語ってくれました。準備段階では、まずナスラック自身がこの新システムのための製品コンテンツデータや、各製品に付随する構成部材管理や価格表示など、各種の属性データも合わせて作成しておきます。そして、その上で実際にユーザが操作するNAS-TPのデザイン検討画面も作成していったとのことでした。
「製品コンテンツとしてはAutoCADで3次元部材モデルをDWGファイルとして作成しました。モデリングはもちろん、2次元図面を出すための属性情報も付加します。完成モデルは、そのままDWGファイルでShowcaseへ持っていきます。一方、Showcase上ではシーン作りを進めます。マテリアルや環境等の設定、モデルのバリエーション登録、調整等ですね。また、製品固有の特性データについては、部材の組合せ条件や価格の引当て条件等をExcel上で定義します。最後にNAS-TPのデザイン検討画面をHTMLとAdobe Flashで作成。さらに製品選択画面や、Showcase連携のためのオプション指定画面を作れば完成です」

“内作の時代”を切り引くShowcase

続いて、前田氏は現場での実運用についても紹介してくれました。まずは部材データから内製したShowcaseコンテンツを活かし、ショールームの「NAS-TP」でデザイン検討。フォトリアルな3Dモデルで確認しながらプランを詰め、決まれば即、見積書を自動作成することができ、一部開発中ではありますが、完成したたキッチンプランからの施工図面の自動作成や、動画によるプレゼンテーション、美しいプレゼンシートへの活用なども可能となりました。営業現場では既に大きな成果が上がっており、将来は物件管理や部品管理、企画商品管理等の機能も持たせたいという声も上がっているそうです。 「3次元データをフルに活かすことで、システムキッチン以外の8点製品を含む提案も可能となり、プレゼンテーションの幅は大きく拡がりました。作業時間も短縮され、依頼を受けた翌日にはプレゼンテーションを提示できると好評です。……この点は将来のモバイル営業への取り組みにも繋がりつつあります。このケースに限らず、CADで作った精密なモデリングデータの活用が注目されており、ここからリアルタイム プレゼンテーションが可能なShowcaseの重要性はいっそう増しています。まさにShowcaseは新たな“内作の時代”を切り開こうとしているのです。今後の発展を期待したいですね!」

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