開催レポート

基調講演

「Innovation by Design」をテーマに
革新の必要性をアピールする基調講演からスタート!

2009年6月5日(金)、『Autodesk Solution Day 2009』が東京のグランドプリンスホテル赤坂で開催しました。今回は、厳しい市場環境のなかで生産性向上やコスト削減を実現する革新のデザイン ソリューションとして、「Innovation by Design」をメインテーマに設定。スタートとなる基調講演では、米国オートデスク社のエクゼクティブ、日産自動車  執行役員 CIO グローバル情報システム本部 本部長 行徳 セルソ氏らが登場し、独自のデザイン戦略が披露しました。

アイコンの説明セッション資料(PDF)セッション動画(Silverlight)

 基調講演 

グローバルITガバナンスの実践ー不況下で益々重要になる情報システムの役割と、
デジタル開発によるプロセス・イノベーション

日産自動車株式会社
執行役員CIO
グローバル情報システム本部 本部長

行徳 セルソ 氏

世界的不況だからこそ、積極的な情報システム戦略を

毎年、多彩な分野にわたるユニークな講演、タイムリーなセッションが網羅される「Autodesk Solution Day」のプログラムの中でも、来場者の関心が最も集中する1つが、基調講演のゲストスピーカーです。それはオートデスクが、ネームバリューということばかりでなく、「いま」のオートデスクユーザの最大の関心を的確に捉え、ユーザそれぞれのビジネス上の要請にフィットした話題を提供してくださるスピーカーを選び、お招きしているから。もちろん「Autodesk Solution Day 2009」においても、そのユーザの期待は裏切られませんでした。今回、私たちがお迎えしたのは、日産自動車株式会社で執行役員CIO グローバル情報システム本部の本部長を務めておられる行徳セルソ氏です。ブラジル生れの行徳氏は、ブラジル大手銀行のシステ厶アナリストとして勤務後、米国大手コンサルティング会社や米国日系半導体販社の情報システムディレクター、大手ソフトベンダーのソリューション&サービスディレクターなど多彩なキャリアを経て、2004年に日産自動車へ入社され、世界の日産グループの情報部門を統括しています。——日産自動車は1999年に経営危機に直面しましたが、仏Renault社から迎えたカルロス・ゴーン社長のダイナミックな改革により劇的なV字回復を遂げ、注目を集めました。この改革は現在も脈々と受け継がれ、特に同社の情報システム分野を中心とする戦略に生かされています。この世界的な不況下にあっても、情報システム部門を中心とする改革は着々と進められ、その中心にいらっしゃるのが行徳氏です。そして、行徳氏が「Autodesk Solution Day」のために掲げた特別なテーマが「不況下で益々重要になる情報システムの役割と、デジタル開発によるイノベーション」。世界的不況下にあって多くの企業が経営環境の悪化から投資を控え、情報システム予算も削減傾向に向かうなか、こうした時期だからこそ積極的な情報システム戦略による効率的ビジネスサポートが重要だ、と行徳氏は主張します。

「BEST」の情報システム戦略とグローバルガバナンス

「採用時に10分程の面接を受けましたが、その時こんなことを言われました。“日産のIS部門は何をしているか分からない。これを可視化するため力を貸してほしい”と」。これが全ての出発点であり、この要請に応えて行徳氏が創出し、日産のIT組織改革の基盤となったのが「BEST Program」。IT組織/システ厶の改革5カ年計画です。行徳氏の講演は、この「BEST Program」の背景に当る全社戦略の流れから始まりました。もちろん不況がもたらす状況の厳しさについて「グローバルレベルで見ると、自動車業界はトヨタ・日産の2社が無くなったに等しいインパクト」と語りましたが、同時にこの「グローバルクライシス」に対応する全社戦略「日産GT2012」が始まっていると指摘。そこで日産は、品質管理及びゼロエミッション車でリーダーとなり、5年平均で5%の売上増大を目指すと紹介しました。通常なかなか聞けないような、全社戦略の詳細な解説は聴衆の大きな興味を惹きましたが、本番はここから。いよいよ「BEST Program」における情報システム戦略とグローバルガバナンスの解説が始まります。行徳氏はまず、一般管理部門のパフォーマンスを測るため全社ベンチマークを行い、組織/システ厶の弱点を明確化。これを踏まえて日産のIS部門がワールドクラスを達成するための情報戦略プラン「BEST」を策定したと言います。「BESTのBはBusiness Alignment。ビジネスプロセスを標準化し、それに合わせて投資の優先順位を決めていくこと。EはEnterprise Architecture、アプリケーションの合理化と再利用促進です。SはSelective Sourcing、グローバルなベンダー管理であり、TはTechnology Simplification。ITプラットフォーム標準化と統合です」

次のステップはワールドクラスのeffectiveness

このようにして、行徳氏はB、E、S、Tの4目標について詳細な紹介を行いましたが、特にポートフォリオ分析でアプリケーションの健康状態をグローバルレベルで可視化して効率化を追求するEnterprise Architecture、欧米・ヨーロッパ・北米の3大拠点からオフショアへのシステ厶の運用・保守の拡大を目指すSelective Sourcing、また、アプリケーション共用を可能にするインフラや世界のグループ社間でシンプル化したネットワークの共用を目指すTechnology Simplificationなどが特に大きな注目を集めました。続いて、このBESTの展開における具体的な事例として、行徳氏は、日産のデジタル開発によるプロセス・イノベーションにフォーカスした「V-3P Design Process」を取り上げました。「V-3P」とは、行徳氏が「Value Up Innovation of Product-Process-Program」と呼ぶもので、新車開発の初期段階から企画設計のあらゆるシーンでデジタル/3D技術を活用し、効率化、品質向上、コストダウンを実現するという事例。原寸大のCGイメージを映写してデザイン検討できるLEDパワーウォールシステ厶や各種のデザイン支援ツール、カラー検討専用CADなど、ユニークなツール/システ厶も続々登場し観衆の大きな興奮を誘います。「トライアル段階おける3Dの幅広い活用によりリードタイムは50%短縮され、従来20カ月かかった作業が10カ月でできるようになりました。結果としてDigital Knowledgeの標準化が徹底できた点も非常に大きく、Digital Innovationによりさまざまなコラボレーションが可能になったのです」。行徳氏はそう語り、すでに達成したワールドクラスの「効率化」に続くBESTの目標として「ワールドクラスのeffectiveness」を上げ、およそ60分間に及ぶ講演を終了しました。——まさに日産のワールドワイドな事業戦略、IT戦略、開発戦略が見わたせる充実の内容に、満座の聴衆から、感嘆の溜め息と万雷の拍手が贈られたことはいうまでもないでしょう。

 ご 挨 拶 

デザインイノベーションで不況を勝ち抜く

オートデスク株式会社
代表取締役社長 兼
米国オートデスク社
バイス プレジデント

鬼澤 盛夫

「競争力のある製品開発で効率的な業務改革をサポート」

世界的に厳しい経済環境のなか、日本の企業においては投資を控える傾向が顕著となってきているようです。しかし、投資を控えることで、将来的に景気が上向いた際、市場ニーズにスピーディに対応できなくなる可能性もでてきます。これまで成功してきた企業は、どのような経済環境であろうと投資をし、成功を勝ち得ていることを忘れてはならないでしょう。
とくに設計・製造業界では、グリーン設計、グリーンプロダクトへの対応など多くの課題を抱えており、より積極的な投資が必要性なことは明らかです。オートデスクは、「Innovation by Design」を核とした競争力のある製品開発に投資を行い、みなさまの効率的な投資と業務改革をサポートしつづけてまいります。

 特別講演 1 

Innovation by Design – Creating your Competitive Advantag

オートデスク アジアパシフィック  
シニアバイスプレジデント

パット・ウィリアムズ(Pat Williams)

同時通訳

「デザイン業務の効率化と差別化をもたらすテクノロジー」

厳しい経済環境のなかにあっても、優れたデザインにより、市場を席巻し成長している企業があります。それは、企業規模にかかわらず製品開発においてデザインを重視し、競合他社との差別化が行なわれた結果なっています。
私たちオートデスクは、デザイン業務の効率化と差別化を可能とするための設計ツールを幅広く提供しています。そして、デジタルプロトタイプ、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)、環境にやさしいデザイン、ビジュアライゼーション…これらをコラボレーションした高度な設計環境の実現が可能です。私たちは、こうしたハイレベルな製品と技術を背景としながら、ユーザのみなさまの現場に直接伺い、意見を率直に取り入れ、より効果的かつ効率的な設計フローの構築をお手伝いしてまいります。

 特別講演 2 

建設業界のビジネス革新を支えるモデルベースデザイン

米国オートデスク社
AECインダストリマーケティング
バイス プレジデント

ジム・リンチ(Jim Lynch)

同時通訳

「モデルベースデザインで建設業界のビジネス革新を実現」

各国政府は景気刺激策として、高速道路建設などの都市設計から、ライフライン設備改修、グリーンエネルギー開発まで、建設分野へのさまざまな投資を行おうとしています。これらは、みなさまにとっては非常に大きなビジネスチャンスとなるわけですが、このチャンスを確実に獲得し、高い利益を得ていくためには新しいテクノロジーによる革新は欠かせないものと考えます。
そこでオートデスクは、この新しいテクノロジーを握る鍵として「モデルベースデザイン」の導入を提案いたします。これは、デジタル情報によって、初期の設計段階から建設段階、さらには運用段階までをカバーするもので、BIM(ビルディング インフォメーション モデリング)、インフラストラクチャ モデリング、デジタル プラント デザインといった手法が用いられています。なかでもBIMは、建物の3次元モデルを構築し、デザイン検討や図面作成を効率的にするほか、環境に配慮した設計にも有効で、建築設計の在り方を根本から革新する内容となっています。みなさま、「モデルベースデザイン」を導入し、ぜひ大きなビジネスチャンスと高い利益を獲得してください。

 特別講演 3 

成功へと導く設計システムとは? − Digital Prototyping for Success

米国オートデスク社
製造ソリューション
シニア バイス プレジデント

ロバート・バズ・クロス(Robert “Buzz” Kross)

同時通訳

「競争優位性を確立する画期的ソリューションのご提案」

これまでオートデスクは、2次元から3次元CAD へと製品を進化させてきました。そしていま、さらにみなさまの競争優位性を確立するために、「デジタル プロトタイプソリューション」を提案いたします。これは、製造初期段階にデスクトップ上で製品をビジュアライゼーションし、その性能をシミュレーションできるようにするもので、コストや環境を考慮した製造設計フローが容易に構築できるという画期的なソリューションです。3次元CAD の「Autodesk Inventor シリーズ」やリアルタイムシミュレーションの「Autodesk Showcase」を連携させることで実現を可能にしました。
なお、オートデスクは現在、直感的な操作性でパラメトリックや履歴ベースモデリング、ダイレクトモデリングが同時に使用できる「Inventor Fusion Technology」を開発するなど、みなさまをさらに成功へと導く設計システムの研究も進めています。みなさまと共に厳しい市場環境を乗り越えてまいりましょう。

さらに関連記事を読む!

着々と進化するオートデスクのソリューション新技術「Inventor Fusion Technology」を公表

ページトップへ▲