Autodesk® Fusion 360® に搭載されているジェネレーティブ デザイン機能を活用した「ジェネレーティブ デザインで AI デザインに挑戦しよう」学生デザインコンテストを開催いたしました。
「身の回りのものの進化」をテーマとし、参加した学生さんには新しいジェネレーティブ デザインの可能性を感じて頂けたと思います。
設計でも今後は AI を活用することが増えていきます。ひとつのアイデアから、数多くの高パフォーマンスな設計案がすばやく生成されるジェネレーティブ デザインを利用すれば、設計のソリューションはひとつだけに終わりません。
設計者一人では思いつかないような素晴らしいソリューションが次々と生まれ、そこからニーズに最適な設計を選択することができます。
ぜひ今後もジェネレーティブ デザイン機能を使用し、実践で役立つスキルを身につけて頂ければ幸いです。
今回のコンテストでは学生の柔軟な感性とジェネレーティブ デザインで新たなアイデアから AI を活用する作品が多く応募されました。
受賞作品と審査員からのコメントをご覧ください。
ジェネレーティブヘッドホン/
GD モニターアーム
埼玉大学先﨑 拓真さん
ジェネレーティブ デザインをロボコンで使う
呉工業高等専門学校中野 景悟さん
高専ロボコンでよく使われるオムニホイールを使ったフレームをジェネレーティブ デザインで作成した。従来のフレームは部品数が多く組付けに時間がかかってしまうメンテナンス性の良くないものだったが、それ以上改善のしようがなく長いあいだ形状に大きな変化がなかった。そのためジェネレーティブ デザインを使って設計を見直してみようと思った。
ジェネレーティブ デザインを利用することで、本体に加えてナットなどの小さい部品もひとつの部品として統合され、部品数を18個ほど減らしメンテナンス性を向上させることができた。
フレーム自体の強度も元のフレームの強度より弱くなることなく、また部品数が減ったことでその部品を加工する時間の削減や軽量化にも成功した。苦労した点として、荷重の設定が挙げられる。
ロボコンで使う部品のため、上に乗るロボットの重量やロボットが旋回する際の荷重など想像しにくい様々な荷重のパターンがあり設定するのが大変だった。
ジェネレーティブ デザインの特徴である軽量化・強度アップだけではなく、部品点数削減を実現されたデザインであることがアピールされていることが高評価でした。具体的には高専ロボコンでよく使われるオムニホイール部品18部品を削減したこと、合わせてアセンブリされたプロダクトにおける破損時のメンテナンス時間を短縮することにも繋がることを自主学習されていました。
優秀賞の受賞おめでとうございます。
GD-I-MASK
日本大学大学院春田 隆佑さん
【CONCEPT】マスクの息苦しさ、布マスクなど形がクシャっとなる悩みを解決。Generative Designで形状生成した、人間ではたどり着かないスタイリッシュなインナーマスク。鼻筋に究極にフィットし、会話でもずれにくいです。
【BACKGROUND】実際にインナーマスクを使用しているのを見て
といった課題が見えました。
Generative Design によってマスク形状を維持しつつ効率的な肉抜きを行い、スタイリッシュな形状を目指しました。鼻筋にフィットさせ口角等に触れる面積を抑えることで、会話で口周りが動いたとしても、本体のずれを抑える構造を実現しました。
【SIZE】約 88 mm × 43 mm × 38 mm 実際に自分自身の顔をもとにモデリングし保持・障害物ジオメトリを作成。3D プリントしフィット感も確認し、会話でもずれないことを確認。
マスクの息苦しさ,布マスクなど形がクシャっとなる悩みを解決したいという問題点を、ジェネレーティブ デザインを使用した形状で今までに無いプロダクトデザインを考えた点を評価しました。またプレゼンボードのようにデザインをまとめている点も高評価でした。新たな作品を次も期待しています。
発想力が素晴らしいで賞の受賞おめでとうございます。
架台
名古屋大学大嶋 シュテファンさん
僕の所属する名古屋大学宇宙開発チーム NAFT というサークルでは小型のハイブリットロケット(全長約 2 m、総重量約 5 kg、最高高度 1 km程度のもの)の開発をおこなっています。
ロケットを製作すると必ず必要になるのがロケットを置くための架台です。ロケット本体の設計では重量や強度、外部形状に厳しい制約がありますが、架台はロケットを安定して支えられればいいので比較的自由度があり過去に製作したロケットの架台も様々遊びが加えられていました。
また打ち上げは共同打ち上げ実験という形で各地のロケットを開発しているサークルなどと共同で行うので、機体だけでなく架台の見た目も広報上非常に重要です。
そこで今回はジェネレーティブ デザインで有機的で、デザイン性に富みかつ安定して機体を支えられるような課題を作成しました。
ジェネレーティブ デザイン特有の絡みつくような形状にしたかったので脚になる保持ジオメトリは広がりを持って配置し、安全率は大きめに設計しました。またせっかくなので課題だけでなくロケット本体もワンパースモデルとして一部製作しました。(機体の全身 CAD はありますが僕のノート PC では処理しきれないほど重いので今回は使用しませんでした)ロケット外観も直近に製作したものを踏襲しています。背景は打ち上げを行う伊豆大島をイメージし Crossroads を使用し各種パラメータも微調整しました。
Fusion 360 を使用して小型のハイブリットロケット開発をおこなっているとのことで、全体的にレベルが高いことが伝わってきました。今回は開発したロケットを安定させるための架台をジェネレーティブ デザインで作成されたプロダクトもロケットにあっていてかっこいい仕上がりでした。レンダリングを工夫して作成しているところも高評価されました。
ソフトウェアスキルが素晴らしいで賞の受賞おめでとうございます。
時形(とけい)/ Space Block
宇都宮大学飯泉 一馬さん
時形(とけい)Generative Design を様々なものでプロトタイピングしていく中で、支える部分と支えられる部分がしっかりと分かれているものと相性が良いということが分かりました。「時計」という存在は、支える部分としての時計板、支えられる部分としての針や数字部品と 2 つが綺麗に分かれています。
また時計としては板と針と数字の部分の繋がりは本当は必要なく“無駄なもの”だと感じます。そこでその無駄なものを Generative Design によって美しく“必要不可欠”なものに変換してみたいと思い製作しました。
Space BlockGenerative Designg は、“支える部分”と“支えられる部分”がしっかりと分かれているものと相性良いのですが、そういった部分が存在しない小さな一体の部品の中で、“支える部分”と“支えられる部分”をわざと作ることで相性を良くすることができるのではないか?という問いから作品を作成しました。
レベルの高いジェネレーティブ デザインの作品を多くSNSにて発信されていたことが評価につながりました。
また壁掛け時計からコップまでいろいろなジェネレーティブ デザインを見ることができて楽しかったです。
個人的には壁掛け時計は、ぜひとも製品として金属3Dプリントでも作成したいなと思ったりしました。
SNS 発信賞の受賞おめでとうございます。
ジェネレーティブ デザインペン
九州大学大学院宇山 明穂さん
なにを:ボールペンをデザイン対象にした。なぜ:普及してから 70 年近く経っても形がほとんど変わらないボールペンの製造方法が、インジェクションからアディティブに、人間から AI に変化した時、形がどのように進化するのかを検証したいと思ったため。
ジェネレーティブ デザインで工夫した点:
皆が日常で使用している何気ないデザインにジェネレーティブ デザインを活用したらどうなるかという点に着目したことと「ジェネレーティブ デザインを使用するパーツとしないパーツに分け、ジェネレーティブらしい形を際立たせた。」というデザイナーの視点が作品に取り込んでいるところが、実践的にジェネレーティブ デザインの使用目的となっているところが評価されました。もしかしたらジェネレーティブ デザイン後にフォーム修正を部分的も入れると、より形状にデザイナーの感性も入ってきて面白いデザインが生み出されるのかもしれません。
デザイン特別賞の受賞おめでとうございます。
未来のビンディングシューズ
北海道大学和久井 隆光さん
ビンディングシューズとは自転車のペダルと足を固定するための靴で、使用することでサイクリングの際、より楽に推力を得ることができるアイテムです。
しかし、従来のビンディングシューズは金具が地面に接触するため、歩くのに向かないという欠点がありました。
そこで接地面が足から離れている下駄の形状に着目しました。鋼を用いて前方に歯よりも短い出っ張りのある下駄を作り、その出っ張りをペダルに仕込んだ磁石で接続するようにすれば着脱機構がシンプルになり、接続部が地面に当たることによる歩きにくさも解消することができます。
しかしながら鋼を素材に用いるとなると重量の問題が生じます。この問題を解決するために下駄の形状にジェネレーティブ デザインを採用し、できる限りの軽量化を行いました。
これにより軽量化を実現するとともに和風な要素と生物的な要素が融合した未来感のある形状を得ることができました。
ユニークな着眼点を元にジェネレーティブ デザインを使用して新しいプロダクトを作成していることが高評価でした。
ジェネレーティブ デザインは自由な発想でいろいろなプロダクトを作成できることが可能です。ジェネレーティブ デザインの形状を元にモデリングしているところが作品に対しての熱意を感じて選出させて頂きました。
審査員特別賞の受賞おめでとうございます。
●作品解説
ジェネレーティブヘッドホンヘッドホンのバンド部分をジェネレーティブ デザインした。ヘッドホンは身近なものだが、市販のほとんどのヘッドホンは同じようなデザインをしているので、これにジェネレーティブ デザインの近未来感の要素が加わればお洒落なヘッドホンができると思った。
また、ジェネレーティブ デザインによってバンド部分の軽量化できる点も大きなメリットである。最初は保持ジオメトリと障害物ジオメトリだけで行ったが失敗を繰り返してしまうため、簡単にモデリングしたヘッドホンのバンド部分を開始形状に割り当てて再度計算させることで、うまくジェネレーティブ デザインのモデルが生成された。
また、対象平面の機能を使用することで仕上がりを綺麗にさせることができた。
GD モニターアーム多関節タイプのモニターアームをジェネレーティブ デザインした。
モニターアームは大きいモニターに対応できる種類のものほどモニターアーム自体の質量も増加するので、机の天板が壊れないために質量をできるだけ軽くできたらいいなということでジェネレーティブ デザインしてみた。計算の設定では 27 インチモニター程度(約 90 kg)を取り付けることを想定し、軸の関節部やモニターを取り付けるねじ穴部分だけを保持ジオメトリとして、できるだけモニターアーム全体をジェネレーティブ デザインによって作成した。
ある程度モデルが完成した後から知ったことなんですが、実際の多関節タイプのモニターアームではガススプリングを使用していることが多いので今回のように単純な条件設定では肉抜きは難しそうです。
●審査員コメント
ジェネレーティブ デザインの特徴を捉えた作品とレンダリングされた画像がとても魅力的で目に留まりました。
ヘッドフォンもモニターアームもどちらもレベルが高く、本物があったらカッコイイと思わせてくれる完成度でした。実用性を考慮する場合には制作する際の強度、しなり等を含めて材料選定やでのさらなる検討が必要になりますが、Fusion 360 上だけではなく、3Dプリントも検討しているところも評価ポイントになりました。
最優秀賞の受賞おめでとうございます。