Autodesk Design Innovation Forum|2010 2010.6.1[火]9:00~18:00(受付8:30)ロイヤルパークホテル(東京・水天宮)

開催レポート

メディア&エンターテインメントのセッション会場は、開場と同時に数百席の客席がたちまち満席となる大盛況。満員で座りきれない人たちのために、別会場に映像中継が行われるほどの人気だった。

A-1

【映画業界最新お客様事例】
USING Autodesk 3ds Max ON HOLLYWOOD FEATURE FILMS

Prime Focus Film VFX
President and Sr.VFX Supervisor
Chris Bond(クリス・ボンド) 氏

メディア&エンターテインメント部門のセッションのトップを切ったのは、ハリウッド映画の世界からやってきたVFXのプロフェッショナル。米国Prime Focus Film VFX社において、視覚効果部門シニアVFXスーパーバイザー兼社長を務めていたクリス・ボンド氏です。実はボンド氏のセッションは、「Autodesk Design Innovation Forum 2010 のオフィシャルサイトが公開された当初より、最も注目を集めたものの1つ。というのは今回、同氏がVFX監督として参加した「レッドクリフ」や「アバター」など、いくつもの大ヒット映画を例に引きながらハリウッドにおける最先端のVFX映像制作現場について語ってくれるというのですから、大きな注目が集まったのは当然でしょう。
期待に胸を膨らませて会場にやってきた来場者たちには、同時通訳用のラジオフォンと共に特製の「3Dメガネ」が渡されました。つまり、いま最も旬な技術の一つというべき3D立体映像のメイキングが語られるということ。そのことを察した来場者たちの期待はさらに熱く高まり、その興奮が頂点に達したころ、演壇上にボンド氏が登場しました。フランクな口調で短く挨拶の言葉を述べた同氏は、早速セッションを開始します。まず自身のキャリアを簡単に紹介しながら、そのキャリアの最初期に出会い、以来今日に至るまで同氏がメインツールとして使い続けている「Autodesk 3ds Max」について、特にVFXパイプラインにおけるAutodesk 3ds Maxの役割について語ってくれました。
「Autodesk 3ds Maxはきわめてパワフルかつ柔軟性に富み、使い方次第で、驚くようなことが可能になるツールです。そんなAutodesk 3ds Maxが、私たちのVFXパイプラインにフィットする理由は5つほどあります」。そう言って、同氏はAutodesk 3ds Maxが備えている強みを1つ1つ上げていきました。まず、同氏の知る限り最も強力なスクリプト言語であるというMaxスクリプト。そして、高度なフレキシビリティに富んだSDK、サードパーティの手になる多種多様なプラグイン、また、Autodesk Mayaなど他ツールとの高度に洗練されたデータ互換性窶披€煤uVFXのパイプラインでは、非常に多くの作業が数限りない繰返しが必要とされています。そこで、このようなプロセスを効率的に進め、完了できるよう、さまざまなプロセスのオートメーション化が進められています。そして、実はこの点からも、さまざまな強みを備えたAutodesk 3ds Maxが果たす役割は、非常に大きなものとなったのです」。そう断言したボンド氏が、そんなAutodesk 3ds Maxのパワフルな機能を紹介する事例として、まず取り上げたのが「レッドクリフ」でした。
言うまでもなく、これは三国志のクライマックスの1つ「赤壁の戦い」を鬼才ジョン・ウー監督が映画化した超大作。日本でも大ヒットとなった映画です。ボンド氏が注目したのは、この「レッドクリフ」第2部のクライマックスの一つである、巨大船団の焼き打ちシーン。25m級の大型船総計2,500隻に上る巨大船団とこれに乗り込んだ7万人の兵士による、精緻にして壮大なスペクタルシーンです。しかし実際にはこのシーン、実写での取り直しが難しかったことから突如CGによる制作が決まり、わずか8週間という短期間しか与えられなかったのだとか。観客たちの多くが、過酷なスケジュールに思わず溜息を漏らしました。しかしボンド氏が駆る画面上では、Autodesk 3ds Maxがまるで魔法のように次々と兵士キャラクターや巨船を生成。今度は会場は感嘆の声に包まれます。続いて近未来SFアクション「G.I.ジョー」のメイキングです。ここでは、高速で飛行する最新鋭のジェット戦闘機を、瞬く間に喰い尽していくマイクロマシンの映像に目を奪われる参加者へ、ボンド氏はそれが世界各地の制作チームが協力して取り組んだ成果だと語ります。
そして、いよいよ参加者は3Dメガネをつけるよう促され、世界的なヒット3D映画、「アバター」のメイキングが始まりました。上映されたのは、作品中盤の前線基地における出撃前のブリーフィングシーンでした。おそらく参加者の全員が鑑賞済の大ヒット映画ですが、その精緻でリアルな3D映像に、改めて驚きの声が上がります。実はボンド氏は2D動画を3D立体映像へ変換する画期的な技術の監修者としても広く知られており、今回の「アバター」の3D映像メイキングにおいては、そのあたりも含めた最も旬な技術が惜しみなく披露されたのです。こうして会場は最後まで熱い興奮に包まれ、終了後の拍手もなかなか鳴り止もうとはしませんでした。

A-2

【ゲーム業界最新お客様事例】
ロストプラネット2における新しい映像表現

株式会社カプコン
CS第一制作室
加治 勇人 氏

続いて登壇したのは、ゲームの世界から来たプロフェッショナル窶披€柏煤Xのヒットゲーム作品で知られる、株式会社カプコンのクリエイター、加治勇人氏の登場です。カプコンといえば「バイオハザード」をはじめヒットタイトルには事欠きませんが、それら無数のヒット作の中から加治氏が取り上げたのは「ロストプラネット2」です。全世界で280万本以上を売りあげた人気アクションゲームの続編としてこの5月に発売され、既に大ヒット中のPlayStation 3・ Xbox 360用ゲーム作品です。
「圧倒的な迫力の巨大生物と驚異に充ちた異世界の景色、リアルで重量感あふれる兵器にメカ、巨大生物の背面に乗って行う戦闘など、本作では文字通りハードスペックの限界に迫るような高度な映像表現に挑戦しています。そしてそれは、私たちがこれまで数々のゲーム作りを経て蓄積してきた、当社の膨大なゲーム制作ノウハウの1つの集大成となったのです」。このようなきわめてチャレンジングなプロジェクトの中核にあって、開発現場を力強く支えたのが、カプコンが自社開発した強力なゲームエンジン「MT Framework2.0」と、これに組みわせて使われた高機能CG「Autodesk Softimage」でした。そして、そうやって作りだされた「ロストプラネット2」の映像クオリティは、まさに圧倒的としか言いようがないものだったのです。特に加治氏が会場に持ちこんで映写した映像パートは、会場の超大型スクリーンに映写しても品質がまったく落ちず、まるで実写を撮ってSFX効果を付けた最新SF映画のようで、会場からも大きな驚きの声が上がりました。
こうして始まった加治氏のセッションでは、テーマを主にグラフィック面に絞り込んで、具体的なメイキングの解説が進められました。まず、本作のトレードマークというべき巨大クリーチャーのパートを取り上げ、絶えず形状を変化させ続けるその巨体上での激しいアクションという、きわめて難度の高いシーンのメイキングが紹介されます。前述のとおり常に変化しつづけるクリーチャーの動きに合わせて、Autodesk Softimage上で制作した“刻々と変化しつづけるアタリ”がポイントです。また人間とは異質の動きをあえて人が演じ、これをモーションキャプチャして異形のクリーチャーに反映させていく独特のテクニックや、そうしたクリーチャーの死とともに出現する派手な氷結表現に多彩なバックグラウンド描写。そしてリアルかつ繊細な水の表現等々、そこにはまさしくカプコンのクリエイターたちの膨大な蓄積の跡がうかがわれます。
まさに「アナログ手法と最新技術が融合」した、そのノウハウの集大成が、会場を埋め尽くしていた聴衆たちを文字通り圧倒。ゲーム界の巨人の実力をまざまざと見せつけるセッションとなったのです。なお、加治氏のセッションが終演した直後、この「ロストプラネット2」で制作プロデューサを務めていた竹内潤氏が会場に出現。これをオートデスクの司会者が目ざとく発見し、登壇を求めました。そこで竹内氏も飛び入りという形で演壇に上がり、短く挨拶を。思わぬサプライズゲストの登場に、会場からは盛んな拍手が贈られていました。

A-3

【映像・アニメ業界最新お客様事例】
フルCGリミテッドアニメーションへの挑戦

株式会社サンジゲン
代表取締役
松浦 裕暁 氏

続いては、アニメーション業界を代表して、株式会社サンジゲンの代表取締役、松浦裕暁氏が登場しました。サンジゲンと言えば、2006年の設立以来、すでに約60タイトルもの作画アニメの制作に参画し、Autodesk 3ds Maxによる3D CGIによるアニメーションを主力としながら、あくまで旧来の国産手描きアニメの味わいを3D CGで再現することにこだわってきたクリエイティヴ集団。同社を率いる松浦氏は、このような2D手描きアニメ独特のタッチを生かした3D CGアニメーションを「フルCGリミテッドアニメーション」と呼び、創業以来その表現を模索し続けています。そして、2009年からは「咲-Saki-」をはじめ、いよいよ作画アニメキャラクターのCG化にチャレンジ。2010年現在、同社が進行中の20タイトル余の作品中7割までキャラクターアニメになっています。
「CGをいかに作画アニメに馴染ませるか。それはディズニー風のフルアニメでなく、日本ならではのリミテッドアニメのルックを損なわずに3D CGで再現しようという挑戦でした。いうなれば作画アニメのようなタメ・ツメが効いたリミテッドアニメ、3D CG で作るジャパニメーションです」。そこで今回、松浦氏は、このフルCGリミテッドアニメーションに対する同社のチャレンジに関して、表現テクニックや技術面だけでなく、“経営者としての視点”から、そのコストや利益の問題にまで踏み込んで、徹底して具体的に語ってくれました。
それは言わばビジネスとして、企業経営の手段としてのアニメーション制作という、かつてないユニークなセッションとなりました。「KISS×KISS」「はなまる幼稚園」「咲-Saki-」等々、会場で参考上映された同社の制作になるアニメーション作品は、いずれもかわいい女の子たちが登場する「萌え」るアニメーション作品ですが、松浦氏が語ったのは逆にどっしり歯ごたえのあるアニメーションスタジオ経営論。もちろんどの作品も、私たちが子どもの頃から見慣れてきた、手描きアニメーションが持つ独特の“間/タイミング”といった気持ちよさが、Autodesk 3ds MaxのCGによって的確に再現され、同社の“Autodesk 3ds Max使い”としての技術の高さを伺わせてくれます。従来のリアリティ重視の3D CGのアニメーションではありえなかったほど、すぐにキャラクターたちに感情移入できてしまうのもそのせいでしょう。
しかし、それ以上に同氏のセッションを熱くしたのは、やはりその経営者としての視点に他なりません。アニメーション作品1本あたりに与えられる制作費用を具体的な数字で示し、個々の制作作業に関して、そこで発生するコストと作業効率を細かく弾き出しながら、アニメーションスタジオの経営という観点から“手描き風のアニメーションをあえてCGで表現すること”の意味、意義を語ってくれたのです。赤裸々に並べられる具体的な数字と、その1つ1つに関する松浦氏の、“現場”にいるからこその鋭い指摘の数々は、技術論とはまた違った意味で、多くの参加者たちの強い関心を集めました。

A-4  

【ゲーム業界最新お客様事例】
Uncharted2:Among Thieves
(アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団)
における
キャラクターアニメーションパイプライン

Naughty Dog
Lead Character Technical Director
Judd Simantov(ジャッド・シマントフ) 氏

終始熱く盛り上がりつづけたメディア&エンターテインメント部門のセッションも、いよいよ最後となりました。満を持して登壇したのは、米国のゲームメーカー・Naughty Dog社のジャッド・シマントフ氏。取り上げたタイトルは、世界的にヒットしたPlayStation 3用ゲームソフト「アンチャーテッド エル・ドラドの秘宝」の続編「Uncharted 2:Among Thieves(アンチャーテッド 黄金刀と消えた船団)」、そしてツールは「Autodesk Maya」です。
「Uncharted 2」というゲーム作品は、ゲーム業界に詳しい方なら一度は耳にしたことがおありでしょう。2010年3月に米国サンフランシスコで開催されたゲーム開発者の祭典「Game Developers Conference」において、ゲーム開発者自身が選ぶベストゲーム大賞「Game Of The Year」の10部門のうち4部門まで受賞した超話題作こそ、この「Uncharted 2」。いわばゲームのプロたちが、ナンバー1と認めた作品なのです。そして今回、その話題のゲーム作品のメイン開発者の1人であるシマントフ氏が、いち早く日本でのセッションに登場するとあって、このセッションは当初よりゲーム分野のクリエイターたちの大きな注目を集めていたのです。
「Uncharted 2において、私たちは、PlayStation 3のパワーを極限まで最適化することに最大限の力を注ぎました。Uncharted 2のキャラクターは、主に Autodesk MayaとAutodesk Mudboxという2つのオートデスク製品を使ってモデリングしており、ここでは主にこれらによるキャラクターアニメーションのパイプラインについて紹介していきます」。そういって、セッション冒頭でシマントフ氏が上映した「Uncharted 2」のトレイラーは、ハリウッド大作映画と見紛うようなリアリティと圧倒的な迫力に充ちたシネマティック映像により、一気に参加者の心を鷲掴みにしてしまいました。
セッションはまず、キャラクターの制作に関して、順を追って細かく具体的に進められていきました。コンセプトアートから、ベースメッシュに始まるモデリング作業へと進んでいくキャラクターメイキング。そして、セットアップとモーションキャプチャのパイプライン、さらにはアニメーションと、手順自体に大きな違いはありませんが、段階を追って一つ一つきめ細かく解説されるテクニックの内容は、どれもユニークなアイディアにあふれています。徹底的に作業の効率化を図っていくために、Rigging Processでは3種類のベースとなるボーンモデルを用意し、これを独自開発したRiggingツール上で統合的に管理。各キャラクターにスケルトンモデルと設定を共有させ、操作は独自のテンプレートでコントロールできるというシステ厶。また、右半身と左半身の処理をシンクロさせて、右半身を調整すれば自動的に左半身の方にも全く同じ調整が施されるという処理。また、視点の距離に応じてポリゴン数が自動的に増減し、処理の負荷を抑制する「LOD(Level of Details)」機能など、社内開発したオリジナルツールの数々も興味深く、ゲーム製作者たちに限らず多くのクリエイターたちの注目を集めました。
そして、こうした作業効率化のためのさまざまな工夫を凝らした環境を造り上げた上で、シマントフ氏らはキャラクターそれぞれにきめ細かく顔や表情を作り込み、「Uncharted 2」ならではの生き生きした個性を与えていくのだと言います。また、その一方では、一連の制作作業の流れを自動的に記録しておき、必要に応じて過去の状態を復元できる「History Tools」や映像的なモーションを表現する「IK Am Context」などといった新ツールも惜しみなく紹介されました。もちろん今後もAutodesk Mayaとの連携を重視したツールを積極的に開発し、作業の効率化に挑戦していきたい、と、シマントフ氏は語ります。
もちろんこうした自社ツールに関しては、内容が内容だけに会場内での録音や録画は、プレス目的以外では許されません。窶披€狽サこで、というわけでしょうか。会場内のそこここで、必死にメモを取る参加者たちの姿がたくさん目に付きました(もちろんメモを取るのは問題ありません)。そのせいか、静けさに充ちた熱さとでもいうような熱気が会場いっぱいにあふれ、今回もまた別の意味でヒートアップしたセッションとなりました。全てを語り終えたシマントフ氏の、フレンドリーな気持ちのこもった「Thank You!」のひと言に、たちまち会場全体から爆発的な拍手が沸き起ったのは当然だったでしょう。

講演者の都合により、開催レポート、資料ダウンロード、動画配信などがない場合がございますので、予めご了承ください。

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